PE制度を支える米国内諸団体の歴史、関係

6.PE制度を支える米国内諸団体の歴史、関係

米国PE制度の公式な起源は 1907年ワイオミング州におけるPE免許認定ですが、欧米社会では古くからEngineer = 技術者 を社会の発展や存立に不可欠な専門家あるいは専門職として位置付ける土壌がありました。

米国では1907年から半世紀以上前に遡る1850年頃からASCE(土木技師協会)やASME(機械技師協会)といった分野別技師協会が自主的に誕生し、ASMEが制定したボイラ安全規格によりボイラ爆発事故の低減に大きな効果を挙げるなど、専門職として公衆からの信頼を得るための素地が時間をかけて醸成されていたと言われています。(参照: 技術者の倫理入門第三版、杉本・高城、2005 第15章ほか)

表1は、日本ではまだ江戸時代であった頃からの米国エンジニア制度の歴史を概観し、州政府という公的機関だけでなく様々な非政府機関が重層的に相互作用を及ぼし合いながら現在の米国PE制度を形作ってきたということを示しています。

表1 米国エンジニア制度 発展の歴史

米国エンジニア制度に関連する出来事

米国の社会情勢

1852

ASCE(米国土木技師協会)設立 1861-65 南北戦争

1862

モリル法(Morrill Land Grant Act)成立 – これ以後州立大学が増加

1873

AIME(米国鉱山技師協会)設立

1880

ASME(米国機械技師協会)設立 1890 シャーマン法(独禁法)成立

1884

IEEE(米国電気技師協会)設立

1907

Wyoming州でPE法成立 1914-18 第一次世界大戦
1917 ロシア革命
1929 世界大恐慌

1908

AIChE(米国化学技師協会)設立

1920

NCEES設立 – 当初は7つの州PEボードが参加

1932

NCEESがModel Law発行 1933-38頃 ニューディール政策

1932

ECPD(専門技術者開発協議会)設立 – NCEES, ASCE,ASME,IEEE他が参加)

1934

NSPE設立 – 当初は4つの州PE協会が参加 1939-45 第二次世界大戦

1935

NSPEがCode of Ethicsを発行

1940頃

New York州でFE制度が始まる

1946

NSPEがCanon of Ethicsを発行

1950

米国の全ての州でPE法が成立

1965-66

NCEESがFE試験、PE試験の提供を始める 1969 アポロ11号月面着陸
1970年代 消費者重視運動

1976頃

アイオワ州がPE免許更新時のCPD申告制度を導入

1976

NSPE Canon of Ethics中の「エンジ業務の価格競争入札を禁止」とする条項を米司法省が独禁法違反として提訴。4年間にわたる法廷闘争の末、同条項をNSPEが修正することで和解

1981

NSPEがCode of Ethicsを発行 – 2007年改訂が現時点で最新

1984

米国の全ての州がNCEESのPE試験を採用する

1980

ECPDがABET(全米工学教育認証協議会)と改称する

1989

米英豪等によるWashington Accordが発効 米国はABETが参加 1991 ソ連崩壊
1995 世界貿易機構(WTO)成立

1994

オレゴン州PEボードが日本でのFE試験、PE試験を開始する

1996

NCEES FE試験が分野別となる

1997

ABETがEngineering Criteria 2000 (EC2000)を発行

2000-01

JSPE(日本プロフェッショナルエンジニア協会)設立。 NSPEと協業協定を結ぶ 2001 米国同時多発テロ

2002

NCEES PE試験が全選択肢式となる

2005

Washington Accordに日本(JABEE)が加盟

2006

日本でのFE試験、PE試験の実施主体がオレゴン州からNCEESに移行する

2014

NCEES FE試験がコンピュータ試験(CBT)となる

(参照: NCEES History, NSPE History, ABET History, JSPE10年史)

各団体間の関係を、個々のエンジニアのライフサイクルにあてはめたイメージを図1に示します。