【実施報告】関西施設見学会 / FY2019 Kansai Visiting Tour

日時:2019622() 14:00-15:30
場所:滋賀県大津市 びわ湖ホール
参加:9(会員7名、非会員2)

 今年の関西施設見学会は、大津市のびわ湖ホールを(1998年に完成)を訪問しました。びわ湖ホールは西日本初の4面舞台を持つ劇場で、オペラ、バレエ、コンサートなどの舞台芸術専用のホールとして活躍しています。

普段は入ることのできない、舞台、音響室、調光室、楽屋などの劇場の裏側を順番に見学するだけでなく、マイクや照明などの舞台道具の特徴についても説明いただき、更に音響と調光については実際に操作することもできました。

  • 客 席:観客がいる場合といない場合で人による音の吸収が違うため、リハーサルで上手くいっても、本番の音響がイマイチでアーティストが演奏に集中できないことが多くあるそうです。びわ湖ホールでは座席の木材、折り畳み時の座面の角度、背もたれ等のクッション材を考慮することで、観客がいない状態でも本番同等の音響効果を得られるようにしているとのことでした。また、上演する演目によって、音響を調整するため可動式の天井や壁面が活躍しているとのことでした。

  • 舞  台:18x18mの正面舞台に加え、左右+奥の3面があることから4面舞台というそうです。更に、正面舞台は上下に稼働し、舞台の小道具などを設置するのに使用するとのことです。海外からオペラをそのまま引っ張ってこようと思っても、正面以外の舞台のスペースが少ないと、演出を省略する必要があるが、4面舞台であれば省略なしでそのまま対応できるとのことでした。舞台上に乗ったまま、正面舞台が回転や、上下や奥に移動するのは圧巻でした。上下移動の際には、エレベータなどと同様に巨大なカウンターウェイトが上下しているのを見て、エンジニアリングが社会に役立っていると感じることができました。

  • マ イクとライト:舞台上の音を観客に届けるマイクも多くの種類があり、マイクの指向性を考慮して持たないと意味がないことを実演していただきました(持ち方の基本はマイクに対して正対すること)。また、マイクの収音部分に手がかかるように持つと、指向性が変化することや、最近多用されているワイヤレスマイクは音響をデジタル化する際に上下の周波数帯域がカットされているので一部のアーティストは不便だけど帯域のカットされない有線マイクを意図して使っているとのことでした。デジタル化すると情報が欠落するのは信号処理の基礎ですが多くの利便性をもたらすため我々の生活で多用されています。一方で、その違いを重視する人にとっては未だアナログのほうがいいというのも新鮮な感覚でした。

  照明については、舞台の役者をくっきりと見せるためかなり強い光が舞台に降り注いでいるのが体験できました。役者の立ち位置によって照明の角度、光量、種類を逐次人の手で調整してオペラのシーンは形成されているのが分かり、機械が入り込めない職人技を感じました。技術革新により自動化は進むと思いますが、人でないとできないものもあるというのを感じ取れました。因みに舞台の照明に照らされた状態で客席を見ると、最前列ぐらいしか観客の顔がはっきりと分からず、アーティストとアイコンタクトしたいなら最前列以外は意味がないということが分かり複雑な気分になりました。

普段コンサートホールに足を運んでも、その演目や音楽が素晴らしかった、どこが良かったという感想以上のものはなかなか感じられません。今回、その舞台を実現するためにどのような技術が使われているのか目にすることができ、今後同じような機会があったとしても、これまでとは違った視点で見ることができそうです。

今回の参加者は9名と多いとは言えませんがJSPE会員だけでなく、会員の家族の方が2名参加いただけたのは大きな前進だと考えています。我々がエンジニアとして活躍するためには家族の協力は欠かせませんので、今後も会員だけでなく家族も含めた交流ができるイベントを企画していきたいと思います。併せて、こんなところに行ってみたいという希望があればぜひ企画部会に一報ください(plan.2007@jspe.org。会員の皆さんが参加したいと思うのが一番重要ですので。

(個人的には、来年は近大マグロとか近大の実験用原子炉の見学会もいいと思っていますが、意見をいただけると助かります)

 

JSPE企画部会

西久保